2月13日(火)         入院その3へ 
 夜中2時40分にトイレに起きた。下剤が効いているのか下痢状態。その後は例によって寝れず、CDを聴きながら過ごした。4時頃うとうととして寝付いたのか、6時のアナウンス。「おはようございます。今日は2月13日火曜日です。これからお部屋に伺います」の声で目を覚ました。Eさんは今日検査なので、朝早くから下剤を飲み続けている。午後の検査らしい。やはり眠れないのだろう。何回もトイレや食堂を往復している。Sさんは疲れたのかぐっすり寝入っている。いつも朝早くに忙しそうに動いているので疲れるのか? Hさんはマイペースといった感じで過ごしている。思った通り優しい青年だ。朝刊が休みなのを忘れていて売店まで行った。糖尿病に効く(?)グバ茶を買った。糖の吸収を押さえるとか? 8時5分からのBSクラシックでは、ピアノ3重奏を放送している。天候は昨日と同じ青空と雲の混じったまあまあの感じ。自宅の方の交通関係が報じられていないが、今日は天気なのかな?
 楽しみの入浴が9時30分。肩のチューブの入り口に防水テープを貼ってもらっての入浴。今日は向かいのH君と一緒の入浴時間であった。時間帯が若干重なっていたのか、他に4人の方が入っていた。とんでもない馬鹿な話を一つ。思いこみというのはひどいというか私がぼけたのか、シャンプーのつもりで使っていたのは実はハンドソープ。石鹸にはかわりがはないのでいいけれども、笑ってしまった。浴室に向かう時にも、ごまていねいにノブを回してロックまでしたのに全然気がつかなかった。いつもハンドソープを使い慣れていたせいか?気がついたのは、棚にハンドソープをしまったときに、横に目に入ったシャンプーを見て「はっ」と思ったというお話。 Eさんは、今日大腸ポリープを検査で切除するということで、昨日からかなりの下剤を飲んでいるようだ。一時間に1リットルぐらい飲むそう。合計で4500cc飲むらしい。
 暇な一日をどう過ごそうかと考えるほど暇である。テレビも段々楽しみになってきて、連続ものなどを視聴している。ここでベストテン。
1 織田信長  2 水戸黄門  3 不幸の味は密の味  4 クラシック  
5 思いっきりテレビ  6 北条時宗(週) 7 はぐれ刑事純情派  8 午後のロードショー
9 ニュース関係  10 N響アワー
 TV番組は専業主婦向けだけではなく、病院患者向けのねらいもあるのか。妙に納得した。
 午後は、眼科で眼底を診てもらった。今のところ大丈夫だそうだ。この後、血糖値を調整しながら養生(?)をと言われた。そのあと、超音波検査があった。ゼリー状のものを塗りながらエコーで調べていく。眼科での瞳を開けるための点眼薬が効いていて、6時30頃まで霞がかかったようだった。
 妻が早々に来てくれた。今日、幼稚園は臨休だったそうだ。自宅の方はひどい大雪だそうだ。昼の弁当をまだ食べていないとのことで食堂で食べた。妻がおいしそうに(私の手前、余り表情は変えずに)食べているのを見て、こんな時間と空間にいることがとても幸せだなあと思った。
 娘の歯医者の日。JRが全然動いていないとのことで高速バスで矯正歯科へ向かったそうだ。夕方6:30頃見舞いに来てくれた。ヤマハ楽器店は開いていなかったそうだ。別の楽器店へ行ったが結局求めていた曲はなかったとか。小さい楽器店にあるはずはないか!。妻にも、先日「あったら頼む」といっておいたマックライフもあるのかどうか、札幌駅で書店を覗いてくれたそうだ。余計なことをお願いしてしまったかな。二人とも6:50頃帰った。家族といるって本当に安心できる事なんだなあって今更に思う。
 夕方5:40頃B先生が来て説明をしてくれた。いつもカロリーはどの位とっていたか聞かれたが、別にデーターがあるわけでもなし。「不摂生をしていた」ことを前提に、自分の食生活について応えた。先生に「体重が3キロほど落ちたけれど...」と言われ、「いいえ、標準に限りなく近づいていっているようで良かったです。」と応えた。すると先生は、「いいえ、余り体重が落ちると脂肪を取り込もうとして燃焼作用がおき、その時にケトンという物質が出て非常にまずいです。だから余り体重は落とせません。ですが、今もうすでに2000キロカロリーとっています。ブドウ糖なので糖尿との関係が難しいところで、これ以上増やせませんし、困りましたね」とのことであった。まあ、医学というか人の身体というのは難しいものであるとつくづく解ってきた。
 7:15頃、上司のW氏さんが見舞いに来てくれた。途中、大雪で高速道路がストップ。一般道に出たため、面会時間の7時までにつけそうもないと言うことで、わざわざ詰め所に、「遅れるが、面会できるかどうか」許可を求める電話を入れられたそうだ。看護婦がその旨を私に連絡してくれた。本当にきちっとした方である。W氏さんを見ていると本当に素晴らしい上司だなあとつくづく思う。謙虚で大胆で、やさしく厳しく、努力家でねばり強く正義感たっぷりの人柄に、心から敬意を表する。来られた理由は見舞いではあるが、ほとんど仕事の打ち合わせでもあった。なんと嬉しいことか、本当に頭が下がる思いである。病気の私にまで職場のことについて意見を求めてくれる。こんな方はいないと思った。
 明日は、胃部の内視鏡ということで9時以降は水もだめ。9時30分頃寝付いた。

2月14日(水)バレンタインディ
 今日は、胃カメラを食べる日。これで2回目の胃カメラのご馳走ではあるがちょっと心配。10:30頃呼ばれて1階へ。胃カメラとなると外来患者も多く、待合室は混雑状態。入院患者の良いところは、待ち時間がないこと。すぐに呼ばれて、まず喉に麻酔ゼリーのご馳走。次に胃のぜん動運動をおさえる筋肉注射を肩へ一発。余り待たずにいざさっそうと胃カメラ内視鏡室へ。のどの奥にまで本当に麻酔がかかっているのか半信半疑。案の定、喉に入れる時に「ゲッ!」4〜5回「ゲッ!」「B先生もさては慣れていない?な」と思った瞬間、逃れられない状態なので「速く終わるのを待つしかないか」と覚悟を決めてリラックスを心がけるがそう思うとよけいに力が入る。しかし、敵もさる者、胃カメラのコードがグイグイと入っていくたびに私の逞しい食道マシーンは胃カメラをキャッチしようとする。「ゲボッ!」吐きもしないけど、結構辛い。それでも前にあるオリンパス工学の胃カメラの機械を見たり、いろいろ知識を駆使して気を紛らわそうとするが、なかなかどうして...。結構時間が経ったのだろうか、頭の上に聞いたことのある声が。「まだやってるのか!」「長いんじゃないか?」「そこんとこ回して、よし、そのまま進んで....!」と、次から次へと指示が飛ぶ。やはり主治医のA先生だ。B先生も一生懸命に頑張っている。医者って大変だなあ!考えてみれば誰かがその先生の第1号患者になる訳で。かく言う私はB先生の何番目の患者だったのかなあ?
 やっと終わった!カメラを抜くと唾液ともつかない液やよだれが大量に出た。「はい検査完了!」「喉、痛いでしょう?」とA先生。「すいません長くかかって」とB先生。何とも言いようがないので「いえ痛くありません。B先生ありがとうございました」と・・・。すぐに病室へ戻ってベッドに横になった。ぐったり!。もう二度と胃カメラは食べたくない!
 新しい方が入ってきた。Nさんという方だ。結構気さくな方で、話好き。ちょっと部屋の雰囲気も明るくなった。早速、いろいろ話をしているうちに、Nさんの胃カメラ体験談を拝聴。やはり、Nさんも反射が過敏だそうで、なかなか慣れないそうだ。ゼリーを一度飲んでしまったそうだ。そうしたら、喉がしびれてその時はスーと入ったそうだ。「この手だなー」と思った。Eさんも大腸内視鏡の検査について語る。Nさんは10個ほどポリープがあるそうだ。明日、検査及びポリープ切除だそうだ。
 肩に湿布をした。少しは和らぐか? 母から手紙が来た。まあ暇というか手紙魔というか,ちとつきあいきれん。心配は分かるが、こっちだって妻だってみんな同じだ。その度に手紙なんか書いてられん。向かいのH君は明日外科へ行くことになった。やはり手術時は外科病棟へ移るようだ。看護婦に聞いてみたらやはりそうだ。少しずつ看護婦にいろいろな話をしている。
 回診の折り、H君は主治医から最後(?)の説明を受けていた。明日、外科に移るので外科との最終打ち合わせの結果を説明していた。彼の場合は、肛門から12cmの所に炎症があり、人工肛門にはならないが、膀胱付近に炎症がありそこが破れると大変なこととなる。もし炎症があれば肛門をふさいで人工肛門だそうだ。彼は、その後ショックを隠せないでいた。慰める言葉なんか無い。私の場合はもっと肛門に近いところなので(たぶん肛門から3〜4センチの所)完全に人工肛門だと確信した。私は覚悟を決めてきたので今のところはまな板の鯉と言ったところである。この後どうやって一生人工肛門とつきあっていくかを考えている。
 明日は晴れるだろうか。そんなことしか心配がない。

2月15日(木)
 夜はよく寝た気がする。4時50分に目が覚めてトイレへ行った。朝採血と検尿があるのでどうしょうかと思ったけれど、下痢状態なので小便だけをするというのは至難の業。結局何とかなるだろうと思い、用を済ませた。案の定、朝6時20分に採血をした後トイレに行ったが、あまり出ない。
 仕方ないので、少しだけど紙コップに尿をとって検尿棚においた。看護婦にはその旨は伝えた。
 水ばかりを飲んでいるせいか、下痢状態になってきた。腹のあんばいも余り良くない。
 H君は12時30分頃移るというので支度を始めた。昨日のショックが続いているようだった。看護婦さんに後から胸の内を言っていた。「大丈夫だよ」と適当なことも言って慰められないし、まして私自身が人工肛門だなんて言えないし。
昼11時頃、T君が見舞いに来てくれた。所用の途中で寄ってくれたのだと思うが。いろいろよもやま話となった。かえって引き留めた感じになったようだ。申し訳ない。午後3:30頃、私の外科執刀医(私の外科主治医となる先生)M先生との面談があった。「奥さんは?」と聞かれたので、「職場の関係でこの時間にはどうしても間に合わないようだし、無理せずとも私がきちんと聞いておく、といってあります。」ということで、自分ひとりで先生の説明を聞いた。
 写真を見ながら説明をしてくれたが、肛門4cmくらいの所から3〜4cmにわたって腫瘍炎症があるとのこと。他には転移がないと思われるので、外科の先生と相談した結果、この部分を切除することにより腫瘍は根こそぎとることが出来るとのことであった。肛門とは近いため人工肛門にするそうだ。 
 高齢者なら、体力もなく、人工肛門をあきらめて最低の切除と抗ガン剤等で対応することもあるが、まだ若いので最善の方法を採ることを選択したそうだ(もちろん私の同意は求めているが)。
 「転移は本当にないのでしょうか」と念を押したが「無いと思う」とのことであった。人工肛門の場合は入院が長くなるのかどうかを聞いたが、人工肛門の扱いについての教育入院が多少あるとのことであった。2ヶ月の診断書通りで大丈夫だそうだ。S字結腸の先端を下腹部に出して人口肛門にするとのことである。先生が最後に「がっかりしたでしょうけど頑張りましょう!」と言ってくれた。「いいえ、転移がなかったので一安心しています。人工肛門は覚悟の上でしたので受け止めています」と応えた。
 話好きの気さくなNさんは自分の我を通して窓側のベッドに移った。かわりに廊下側にUさんという設計技師さんが入室した。下の外科病棟から移ってきたとのこと。はじめ、他の病院で、胃を切らなければだめと言うことでこの病院を紹介されたが、いろいろ検査を受けた結果、手術の必要なしとのこと。内視鏡で患部を切除し、薬で大丈夫とのことで一応外科手術ということでここへ回って来たようだ。やはり腫瘍そのものは悪性だそうだ。私がコンピュータを使っているのを見て、自分も持ってこようとうれしそうに言っていた。
 人の話はよい方向ばかりで喜ばしいことだ。向かいのNさんも、今日の内視鏡での切除は6個で、一つは12mmあったそうだが切除可能とか。でも、普段は威勢は良かったが、術後はさすがに疲れたのか今は寝ている。残りの小さいポリープは1〜2年後でよいとか、先生が冗談を交えながら言っていたそうだ。
 明日、血糖値がまだ高いのでインシュリンの抗体がないかどうかと、膵臓の検査を月曜にすると言われた。B先生があとで来てくれて「先ほどは言葉が足りなかったかもしれません。」と、血糖値のことなどを詳しく話してくれた。看護婦さんの話では、とにかく体重を落とさないことと、風邪をひかないことだそうだ。熱が出るとたちまちのうちに体力の消耗が始まり体重が落ちていくそうだ。

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